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計算尺の種類


 主な計算尺の形態について紹介します。
 ただし、ロガとかフーラーとかサーチャーとかオーチスキングとか、そういうの(どういうのだ?!)は登場しません。(持ってないし、オーチスキングは売っちゃったし…)
 
 
計算尺以前および周辺
 
 ◆対数の発明
 
・計算尺の原理の根本である対数はイタリア人のシュチーフェルさんがその概念を示し、英国(スコットランド)人のネーピアさんが理論を確立しました。
 
 ◆ガンター尺
 
・英国のエドマンド・ガンターが発案した、対数目盛を直線的に刻んだ計算器具です。
・ディバイダ,コンパス,ビームコンパスなどを使って計算します。
・ヨット・モーターボートの雑誌「KAZI」2007年8月号には、2単位の対数尺とディバイダで船速・時間・距離を計算するといったガンター尺そのものの記事が掲載されました。
・海外のオークションサイトとかを利用しない限り、日本での入手は困難です。当然ながら、私は持ってません。
 
 
 
 ◆セクター(高機能な比例コンパス)
 
・これまた、ガンターさんの発案によるものです。
・ディバイダ(コンパス)を使って、幾何学的に計算を行う器具です。
・ガンター尺は知っていても、セクターを知っている計算尺コレクターはあまりいないかも知れません。私も、かなり面白い題材だと思うのですが、計算尺のことでいっぱいいっぱいでなかなか手が回りません。
・写真はヤフオクに「古い折りたたみ式特殊定規/象牙製」として出品されたもので、スタート価格の 3,000円で落札しました。こんなラッキーなこともあるんですね。
 
 
 
オートレッドの計算尺
 
・2本のガンター尺を並べて互いに摺動させて計算を行うといった、計算尺の原理を世界で初めて実現しました。
・また、上とは別に円版に目盛を刻んだ、円形計算尺のようなものも世界で初めて作りました。
・ともに作った後、しばらく後まで発表してなかったのと、いろんな人たちの曖昧でいい加減な論文や証言などから、カジョリの研究以前はガンターやウィンゲートが計算尺の発明者ということになってました。
 
 
 
イギリス尺(コゲシャル計算尺)
 
・現在(?)の表記でいえば、尺度が A [B B] D 配列となっています。
・昔は乗除計算は主に2単位対数尺 A, B で行い、1単位の対数尺 D尺は主に平方・平方根計算に使われていました。
・S尺,T尺は A, B尺に対応し、T尺は上下逆を向いています。これは、T尺を使用する際は滑尺の上下を逆にして本尺に差し込み、T尺をA尺に合せて使用するためです。
・カーソルの必要性は薄く、採用されてませんでした。
・明治28年発行の「計算尺」(廣田理太郎・近藤虎五郎 合著)では、このタイプの計算尺を中心に計算操作等を解説しています。
 
 
 
 
マンハイム計算尺(グラーヴェ計算尺)
 
・アメデー・マネームが考案した計算尺です。マンハイムはマネームのドイツ語読みです。
・功績は大きく、片面計算尺全体を「マンハイム計算尺」と呼ぶ場合もあります。
・通常の乗除は A, B尺で行われました。
・カーソルが導入され、平方・平方根の計算等に対応します。
・S尺は A, B尺に対応し、T尺は C,D尺に対応します。
・0.57 <θ< 5.73 の範囲の正接 tanθは、tanθ≒sinθ として、S尺の左側を使用します。
・初期の T尺配置の中には、イギリス尺と同様に上下逆を向いて A尺に対応するものもありました。
・J.Hemmi/Hemmi 1, 2, 5〜11, 14〜17, 30〜33(初期), 40〜45, 47, 48 などの古い計算尺がこれに当たります。
 
 
 
 
学校用計算尺
 
・マンハイム計算尺が出た後にすぐ出た計算尺です。
・マンハイムの A, B尺の代わりに D, C尺のずらし尺 DF, CF尺を配置しました。
・ずらし尺は√10で切断されており、C, D尺とともに連続乗除の精度と効率のアップに寄与しました。
・滑尺裏の尺度配置は不明(私の勉強不足)ですが、角度は直角を100゚とする grad. を使用していたようです。
・√10切断のずらし尺は特に日本の計算尺に片面・両面ともに広く採用されましたが、西洋ではπ切断のずらし尺が両面計算尺の片方の面の定番となりました。
 
 
 
 
マンハイム型標準計算尺
 
・初期のマンハイムに CI, K といった尺度が追加されたものです。これは、カーソルのおかげで外尺と中尺の接触部だけでなく、離れた場所にも尺度が配置できるようになったためと思われます。
・前述の「マンハイム計算尺」と区別するために、「マンハイム型標準計算尺」としましたが、これは宮崎治助著の「計算尺詳解」での呼び方です。ここでの「マンハイム」は片面計算尺全体を示す広義の「マンハイム」で、「計算尺詳解」では後述する「電気尺」や「リーツ」,「スタジア尺」等の総称として「マンハイム型特殊計算尺」と呼んでいます。
・メーカーや中古販売業者,コレクターなどによって、"Polyphase"(K&E社)とか、"Polyphase Mannheim","Improved Mannheim","Advanced Mannheim" などと呼ばれています。
・ 0.57 <θ< 5.73 の範囲の正接 tanθは、tanθ≒sinθ として、S尺の左側を使用します。それ以下の角度はゲージマークによりラジアンに変換します。
・Hemmi 30(K尺なし), 32(K尺なし), 34RK, 40RK, P40RK, 50* など、現在でもネットオークション等で比較的容易に入手できる計算尺です。
 
 
 
電気(電気機械)技術者用計算尺(エレクトロ)
 
・マンハイム計算尺にLL尺とダイナモ/モーター効率(Dynamo/Motor)尺度と銅線の電圧降下(Volt)尺度を加えたものです。
・さらに、力率計算のためか、cos尺(P尺)を備えたものもあります。
・KW-HP(PS)変換や円の直径-面積変換のための3本線カーソルを備えたものが多いです。
・LL尺のないものや、補助目盛がついたもの、ダイナモ/モーター尺や電圧降下尺が本尺の上にあるもの、ウエルにあるもの、底面にまで尺度を配備したものなど、バリエーションが豊富です。
・Hemmi 3, 4, 80*〜87* などが日本では該当する計算尺で、おそらく 80K が一番入手しやすいと思われます。他にも Ricoh 107 といった電気尺とダルムシュタットとのハーフのような計算尺もありますが、かなりレアです。
 
 
 
リーツ計算尺
 
・S尺は C, D尺に対応し、マンハイムに比べて直角三角形の解法が少し楽になりました。
・微小角(< 5.73゚)に対する正弦・正接の計算に対応して、専用の S&T (ST)尺が配備されました。
・基線外に補助目盛がついたものが多いです。
・また、3本線カーソル(円の直径-面積)が採用されているものも多いです。
・Hemmi 60*〜70, 74, 2670 などの計算尺が該当し、64, 74 が比較的入手し易いです。
 
 
 
スタジア計算尺
 
・スタジア測量に必要なスタジア目盛 M1, M2 (sinθcosθ尺,cos2θ) 尺を備え、野外での土木測量計算に対応した計算尺です。
・スタジア目盛はスタジア計算の他に意外な使い方ができます。例えば、90°に近い角度φの正弦値 sinφを求める場合、通常の S尺ではあまり正確な答えが出せませんが、sinφ= 2 sin(φ/2) cos(φ/2) としてスタジア尺度で計算可能です。
・IA(AI)尺は A, D, C尺 とともに、1/a, 1/a2, a/b2 等の計算をするのに使います。ただし、計算尺によっては構造や計算範囲の設定(補助目盛など)上 IA尺自体がズレていて、下図に示すように底面カーソルと右副カーソルとの組合せで計算する計算尺もあります。
・Hemmi 90*〜96, 190, 2690*, Ricoh 104 などが当てはまりますが、今ではどれも比較的入手困難な計算尺です。
・円形の Concise スタジア計算機 はネット通販で購入可能です。
 
 
 
ダルムシュタット計算尺
 
・P尺(cos尺)を含む三角関数尺度を本尺に配置し、滑尺裏にLL尺を配置した形式です。
・ヨーロッパに愛用者が多い計算尺です。米国の MLでは、「ダルムシュタットがいかに優れているか」を何度も投稿する人がいます。
・C, D尺と CI尺が対応するので、DI尺が無くても、三角関数が分母側・分子側どちらにあっても計算が可能です。
・反面、三角関数を含んだ連続乗除計算はどうにもなりません。「カーソルは本尺の上に載っている」ということを痛感します。
・日本ではマイナーな計算尺で、Hemmi 130, 130W, 135, 136, Ricoh 121 などがこれに当たりますが、Hemmi の方はたまにヤフオクに出てきます。
 
 
 
横田式計算尺
 
・ダルムシュタットとは真逆の尺度配置で、電気尺の発展版といったところでしょうか。
・片面尺の形式ではメジャーになれず廃れてしまいましたが、そのデザインは両面尺に受け継がれました。
・通常、LL尺は D尺 x に対して exp(x), 1/exp(x) となり、LL3尺とLL2尺の切れ目は e=2.718 になっていますが、横田式は 3.5 で切れています。なぜかは勉強不足で分かりません。
・ある人は「LL尺よりも三角関数尺の方がよく使われるから、三角関数が表にあるダルムシュタットが残り、ヨコタは消えた」と言ってましたが、本当でしょうか?
・とにかく超レアな計算尺で、海外のオークションサイトとかを利用しない限り、入手は困難です。
 
 
 
一般用・競技用片面計算尺(日本)
 
・前述の学校用計算尺を発展させたような計算尺で、Hemmi 2664S を代表とする、日本で最も普及した計算尺の一つです。
・また、このタイプの計算尺、特に Hemmi 2664, 2664S は東京商工議会主催計算尺大会や全日本計算尺競技大会等で大活躍しました。
・片面計算尺は、海外ではマンハイム系の A, B, CI, C, D 尺配列が主流で、ずらし尺系、特に√10切断の DF, CF, CIF, CI, C, D 尺配列はほとんど見られません。
・計算尺は素早く概算を行うことが一番の使用目的であり、目外れがなく、数値の読み移しも極力避けて連続乗除できることが良い計算尺の条件とも言えます。その点、このタイプの計算尺は√10切断のずらし尺により、目外れが無い上に交錯乗除が可能なので、最高速の連続乗除が得られます。
・逆に、西洋ではコックスさんが π= 3.1416 が √10 = 3.1623 に近いことから、π切断が何かと便利と考えてπ切断のずらし尺を両面計算尺に採用したことから、計算尺の終焉までπ切断のずらし尺がメジャーでした。π切断ずらし尺はπの入った計算には確かに便利ですが、ずらし尺本来の交錯乗除の利点が全くなくなってしまい、計算の連続性やスピードは大きく損なってしまいました。
・一般用・競技用の計算尺を使っていた人が、π切断の技術系両面尺に乗り換えたときには必ずと言っていいほど、「計算合わねー」とパニックを起こし、その後、「すげー不便」とイラつきます。逆に、西洋人やπ切断に慣れている人が√10切断ずらし尺の計算尺に持ち替えると、「なんで√10 ?」、「B尺無いなんて信じられない」、「交錯乗除? 気持ち悪い」と、全く理解できないか、生理的に無理的な反応を示します。
・Hemmi 640S, 641, 651, 2662, 2664*, Ricoh 116* などがこのタイプに当たります。
 
 
 
一般用両面計算尺
 
・通常、一方の面がマンハイムの尺度配列で、もう一方の面がずらし尺になっています。
・K&Eでいうところの「ポリフェーズ・デュープレックス」です。
・両面型なら LL 尺がついている機械技術者用計算尺の方がメジャーです。LL 尺がついてないなら Hemmi 2664S のような片面尺の方がマシな感じがします。
・特に、K&E 4088 や Hemmi 150 のように、C 尺と CI 尺が表と裏に分かれているのは非効率的です。
・K%E 4070, 4071, 4088, Hemmi 140, 150, 250, Ricoh 252 などがありますが、Hemmi 250 が一番入手しやすいです。
 
 
 
機械技術者用両面計算尺
 
・一般用にLL尺が加わった計算尺で、ずらし尺はπ切断が多いですが、√10切断も国内の計算尺には結構あります。
・K&Eでいうところの「ログ・ログ・デュープレックス」。
・機械技術者用というか、基礎技術用、工学一般用といった感じでしょうか。
・よくLL尺の列数や三角関数尺の数やP尺の有り無しで、優劣を付けられたり、高級かどうかを判断されます。
・左右基線間距離が 50cm(20インチ)のものには "精密" が付きます。
・Hemmi 149A, 157, 251, P253, 254*, 259D, 260, Relay/Ricoh 151系, 551 などが国内ではメジャーです。
 
 
 
電気技術者用両面計算尺
 
・LL尺に加えて、双曲線関数尺を備えた計算尺です。
・K&Eでいうところの「ログ・ログ・ベクトル・デュープレックス」。
・双曲線関数は交流理論,伝送線路理論などの計算に使用するそうです。
・双曲線関数はさまざまな分野で出てきます。懸垂線,弾道学,彗星の軌道,ローレンツ変換,統計力学,過減衰,スピーカーの設計,梁の振動,GPS以前の双曲線航法,反射望遠鏡,フィン効率,etc. ほとんど何のこっちゃですが…。
・Hemmi 153, 154, 155, 255*, Relay/Ricoh 157, 158, 159 などが該当します。Relay/Ricoh 157, 158 はかなりのレアです。
 
 
 
化学者用・化学工学用計算尺
 
・元素・化合物・原子団の原子量・分子量・式量等のゲージマーク群を有するのが一番の特徴です。
・K&E 4160 は、表面に酸・塩基・塩の化合物,裏面に酸化物と元素のゲージマーク群を備えています。
・Hemmi 257/257L は裏面2列に渡って元素・化合物のゲージマークが並んでいて、小数点位置をアンダーバー(#.###),ラインなし(##.##),オーバーライン(###.#)で区別しています。
・Hemmi 257/257L は温度の単位変換や気体の状態変化の計算用の尺度などが配備されています。
・Nestler にも Nr. 33 / 0330 Chemiker という化学用片面計算尺があり、K&E 4160 とともに Hemmi 257/257L の先祖のような雰囲気があります。(International Slide Rule Museum とかで確認してみてください。)
・K&E 4160, Nestler Nr.33 / 0330, Hemmi 257/257L, 金属化学用 などが該当します。 
 
 
 
その他の技術・工学系計算尺
 
 ◆土木工学用両面計算尺
 
・スタジア測量用の尺度の他に開水路の計算や曲線布設の計算を行う尺度を持っています。
・Hemmi 269 ぐらいです。スタジア計算尺はいろいろありますが、土木工学用となるとほとんどありません。
 
 
 
 ◆電気通信技術用・電子工学用両面計算尺
 
・周波数,波長,デシベル,インピーダンス,リアクタンス,共振周波数,限界周波数などの計算を行う計算尺です。(何のこっちゃですが…。)
・電子工学用 Hemmi 266 にいたっては、特殊な尺度のオンパレードでついていけません。とはいえ、P,Q 尺度は Hemmi 153, 154 などと同じピタゴリアン尺度で、二乗和平方根の計算、r1, r2 尺も調和平均の計算ができ、他分野でも使うことはできます。
・Hemmi 256 は東京電気株式会社(後の東芝)の考案による通信工学用計算尺(昭和14年)に改良を加えたものです。
・どちらの計算尺も扱う数値の幅が大きくて位取りに工夫がなされています。256 は指標と位取り公式を記述し、266 は尺度自体を 12単位にして、目盛数字に単位を付加しています。
・Hemmi 256. 266. Relay/Ricoh 156, Concise 380 などが該当します。
 
 
 
 ◆空調ダクト計算用計算尺
 
・ダクトや配管の計算を行う計算尺。今でも使っている人が結構いらっしゃいます。
・ダクチュラーエース,Hemmi P141, Concise ダクトメジャー などがあります。ダクトメジャーは昔はエアコンスター社からしか買えませんでしたが、現在は製造元のコンサイス社から買えるようになりました。
 
 
 ◆その他
 
・材積計算尺
・砲兵計算尺
・苗頭計算尺
・鉱山通気計算尺
・燃焼効率計算尺
・焼結計算尺
・構造設計用計算尺
・湿り空気計算尺
・大気汚染用計算尺
・自動制御用計算尺
・音響設計用計算尺
・アイソトープ用計算尺
・バネ用計算尺
・セメント用計算尺
・転移歯車用計算尺
・電界強度計算尺
・フローバルブ計算尺
・電力計算尺
・推測統計用計算尺
・抜取検査用計算尺
・etc.
 
 
航法計算盤(フライトコンピューター)
 
・円形計算尺の形状をとったものがほとんどで、今でも使われています。
・飛行機,ヘリコプターのパイロットの必需品、もしくは訓練で使用されるものです。
・対地速度,高度補正,所要時間,飛行距離,機首方向修正,燃料消費量などさまざまな計算ができます。
・E6B(定番,海外の数社が販売), Concise AN-1, AN-2, TANC-3, TANC-3改 などがあげられ、ヤフオクにもわりと頻繁に登場します。
 
 
商業用・経営用・ビジネス用計算尺(工事中)
 
※どうも、この辺の計算尺は苦手で、蒐集も後回しにしてきたこともあり、攻めあぐねています。
・まず、商業用計算尺の先祖の一つと言える K&E の 4094(片面)/4095(両面) Merchant's Rule は片面型は DF [CF, Ci, C] D // [*]、両面型は A [B, C] D // * [*, CI] D (ともに√10切断)といった「片面だけで良いじゃん」的な、ただひたすら乗除計算をやる計算尺でした。
・Nestler Nr. 40 Kaufmann (Merchant, Commercial) も商業用の先祖の一つで、これは金利や割引率を示す尺度や、度量衡をメートル法にしたり、さまざまな通貨をマルクに換算するためのゲージマーク群を持つ尺度を持っています。また、滑尺裏面は英国の通貨ポンド・シリング・ペンスを換算する等分目盛の尺度を有しますが、10進法導入以前の換算法です。
・1910年頃に逸見次郎氏試作の、25cm と 12.5cm のマンハイム計算尺の裏面に算盤を取り付けたものも商業用計算尺の先祖かも知れません。
・なぜか、3.6切断の計算尺がかなりあります。「昔は1ドル360円だったから」という理由は日本の一時期にしか当てはまりません。外国製の計算尺でも、3.6切断が多いのです。
・3.6 切断の理由は、どうも 1ヶ月= 30日,1年= 360日という思想のようです。(あと、関係ないですが、個人的には % → 度 で円グラフが書きやすいですね。それと m/sec → km/hour とか。本当関係ないですね。)
・Hemmi 300 は 30.42 (365日/12月) 切断で、それとは別に 365(日)切断の尺度を設けています。
※商業用をテキトーに書いてみただけでもこの量なので、やっぱり宿題とさせてください。
 
 
中学生用計算尺
 
・国内で売られていた、主に左右基線間距離 20cm(8インチ)の片面尺について記します。
・中学生用といっても、Hemmi, Relay/Ricoh, Fuji の計算尺は十分実用に堪えうるものです。例えば、東京タワーを設計した内藤多仲先生の愛用品の一つが Hemmi 2640 でした。(これで設計したとは限りませんが…。)【写真】
・とにかく種類が多いです。材質(竹製vs.プラスチック製),基本尺度配列(ABCDvs.ずらし尺),目安線の有り無し,三角関数尺度の様式(順目盛vs.逆目盛,60進vs.10進),L尺の向き(順目盛vs.逆目盛) などパラメーターがいっぱいです。
・学校が窓口になって購入している場合は、先生の好みや方針、PTAの意向(値段とか)が、選択の鍵を握っていたと思います。
・「近所の文房具屋で買ってください」の場合はその店の品揃えや売れ筋で買ってしまっていたのではないでしょうか。
・さらにややこしいことに、学校相手だとそこそこ大きなビジネスなので、無数のマイナーメーカーの参入もあり、これがまたコレクター泣かせです。
・イメージは特に示しませんので、「計算尺愛好会」の「計算尺資料館」や Ross さんの「Hemmi Slide Rule Catalogue Raisonne」を参照願います。
・Hemmi 22, P23, P24, 43*, P43*, 45*, P45*, Relay/Ricoh 80〜84, Fuji 82-D, 83, 85, 88 などがこのタイプに該ります。
 
 
 
工業高校用計算尺
 
・まずですね、機械科なら機械技術者用、電気科なら電気技術者用、土木科なら土木工学用計算尺を購入すれば良いと思いませんでしょうか?
・ところが、Hemmi には 254* という工業高校用の計算尺が存在します。これが、254W, 254W-S, 254WN, 254WN-S と大きく4種類に分かれます。さらに、困ったことに、同じ型番なのに固定尺や金具の形状が違ったり、尺度の配列や色が違ったり、ずらし尺の切断箇所が違ったり、ゲージマークが有ったり無かったりといったバリアントがいくつも存在し、コレクターを困惑・疲労させます。
・工業高校の先生は計算尺に思い入れのある方が多く、尺度の配置やずらし尺の切断等について強く要望されたそうで、Hemmi はその要求に答えるために、通常片面全体に対応している目盛刻み治具を、尺度配置を変更できるユニットタイプに造り替えて対応したとのことです。ユザワヤの紳士服イージーオーダーみたい。
・この辺の事情が Hemmi 264/264-S, 274/274-S, さらに Relay/Ricoh 151他のバリアント… にも影響しているような気がします。
・最近、Hemmi 254W に K尺 Vゲージマーク(=4.189) が有るのと無いのがあることに気づいちゃいました。こんな細かいこと、Ross さんに報告なんかできません。
・Hemmi 254* のうち 254W はヤフオクによく出てきます。
 
 
円形計算尺(丸型計算尺)
 
・その原形はオートレッドにより考案され、現在も新品が日本のコンサイス社から容易に入手できる計算尺です。
・最大の利点は「目外れが全くない」ことです。直線型計算尺における基線の置き換えは慣れるとどうということはありませんが、苦痛に感じている人は「円形計算尺の方が使いやすい」ということになるようです。
・また、片手で使いやすいこともメリットです。「風立ちぬ」で主人公が直線型の計算尺を片手で使用するシーンがありましたが、円形だと、よりスマートに計算が可能です。
・両面型の構造は直線型とは別物で、感覚的に滑尺が2本ある感じです。例えば、Concise 270 は表面滑尺に B, CI, C 尺などが配備され、裏面滑尺には S, T1, T2 尺などが配備されてます。直線型の計算尺と同様に、三角関数を含んだ連続乗除が可能ですが、逆面に移って計算するときに先にカーソルを動かす様なミスを犯してはいけません。
・Hemmi 1001, 1002, Concise 27N, 28N, 270N, 300N などが該当します。コンサイスの計算尺は現在もサイトからネット購入可能です。
 
 
その他
 
・露出計算尺,ラリーコンピューター,換算尺,野球計算尺,etc.
 
 ◆別角度のカテゴリー
 
・精密計算尺: 25cm 通常計算尺の 50cm 版。または、尺度を長くとり、何本かに分割した計算尺。
・練習用計算尺: 一般(技術・事務)用計算尺の安価版。
・ポケット計算尺: 携帯用。
・教授用計算尺,OHP計算尺,投影計算尺: 授業,講義,デモンストレーション用。
 

版数リスト
2015/05/26 : ちょっと追加・修正
2015/05/21 : このページ初版