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【解説】 5乗根 a^(1/5) の解法について


※ 問題「5乗根」の答えにも関係してます。 この問題を自力で解きたい人は読まないでください。
 
■ 5乗根の解法手順 (滑尺による数値の設定を 1回までに限定した場合)
 
    h>A[a] 逆sl[i]>h find(x1,x2 | x1=x2) 【h>逆B[x1] ⇔ h>K[x2]】 → D[a^(1/5)]
 
 
 
@ 滑尺を上下逆に差込み、基線を A尺の a に合わせます。(このあと滑尺を動かしてはいけません。)
A カーソル線で 逆さB尺と K尺の数値が 一致する箇所を探します。
 (この数値は答えではありません。 a^(3/5) です。)
B カーソル線下の D尺に a の 5乗根 a^(1/5) が得られます。
 
【注意】
 B尺とK尺の数値を一致させるときに、領域をきちんと合わさないと D尺に答えが出ません。
 例えば、K1,K2,K3領域に対し、B1,B2,B1領域を対応させ、数値を合わせます。
 下記に 0.000001 < a ≦ 100000 における操作
 
 0.000001 ≦ a ≦ 0.00001
逆sl[l.i]>A[a] h>【find 逆B1=K3】 → D[a^(1/5)]
 
 0.00001 ≦ a ≦ 0.0001
逆sl[r.i]>A[a] h>【find 逆B2=K1】 → D[a^(1/5)]
 
 0.0001 ≦ a ≦ 0.000464
逆sl[l.i]>A[a] h>【find 逆B2=K1】 → D[a^(1/5)]
 
 0.000464 ≦ a ≦ 0.01
逆sl[r.i]>A[a] h>【find 逆B1=K2】 → D[a^(1/5)]
 
 0.01 ≦ a ≦ 0.0215
逆sl[l.i]>A[a] h>【find 逆B1=K2】 → D[a^(1/5)]
 
 0.0215 ≦ a < 1
逆sl[l.i]>A[a] h>【find 逆B2=K3】 → D[a^(1/5)]
 
 1 < a ≦ 46.4
逆sl[r.i]>A[a] h>【find 逆B1=K1】 → D[a^(1/5)]
 
 46.4 ≦ a ≦ 100
逆sl[r.i]>A2[a] h>【find 逆B2=K2】 → D[a^(1/5)]
 
 100 ≦ a ≦ 2154
逆sl[l.i]>A[a] h>【find 逆B2=K2】 → D[a^(1/5)]
 
 2154 ≦ a ≦ 10000(1万)
逆sl[r.i]>A2[a] h>【find 逆B1=K3】 → D[a^(1/5)]
 
 10000(1万) ≦ a ≦ 100000(10万)
逆sl[l.i]>A[a] h>【find 逆B1=K3】 → D[a^(1/5)]
 
 100000(10万)≦ a ≦1000000(100万)
逆sl[l.i]>A[a] h>【find 逆B2=K1】 → D[a^(1/5)]
 
 B尺が 2単位尺、K尺が3単位尺であるため、対応する領域がずれていくことが分かります。
 
 
■解説
 
 この解法は、対数尺だけによる 5乗 a^5 の計算を逆行するイメージで得られます。
 対数尺だけによる 5乗の計算は色々考えられますが、尺度間での数値の移動(一度数値を読み取って他の尺度に設定し直す) を認めない場合は、
 
 h>D[a] CI[a]>h h>B[a] → A[a^5] ,  h>A[a] CI[a]>h h>C[a] → A[a^5]
 
 等の方法がありますが、これらの操作を逆行して、滑尺操作 1回で、かつ、尺度間での数値の移動なしで 5乗根を求める操作を見いだすのは私には無理でした。
 
 次に、尺度間での数値の移動を利用した方法は、ISRG の Gary Flom さんのメッセージ #20044 にありました。
 これは、John St Clair さんのメッセージ #20040 の 「滑尺とカーソルそれぞれ 1度の操作で、 1〜100 の数の 5乗根を求めるにはどうしますか?」 への Gary Flom さんの回答で、以下のような方法で 5乗根を求めています。
 
 まず、5乗の計算を、 a^2 * a^3 = a^5 として考えます。
 
h>D[a] → A[a^2] , K[a^3] :
 D尺 a にカーソル線を合わせると A尺に a^2, K尺に a^3 が得られます。
 
sl[i]>h h>B[a^3] → A[a^5] :
 次に、カーソル線に 滑尺基線を合わせ、B尺 a^3 にカーソル線を移動すると、A尺に a^5 が得られます。
 
この操作は、A, B尺で a^2 * a^3 = a^5 といった掛け算をしてるのと同じです。
 
sl[i]>A[a^2] h>B[a^3] → A[a^5]
 
 
 この操作を逆行したものが、Gary Flom さんの 5乗根の求め方で、下記・下図のようになります。
 
    h>A[a] find(x1,x2 | x1=x2) 【B[x1]>h ⇔ sl[i]>K[x2]】 → D[a^(1/5)]
 
 
 
@ カーソル線を A尺の a に合わせます。
A 滑尺を動かして、カーソル線下の B尺数値と滑尺基線上の K尺の数値が一致する箇所を探します。
 (この数値は答えではありません。 a^(3/5) です。)
B 滑尺基線に対する D尺に a の 5乗根 a^(1/5) が得られます。
 
 Gary Flom さんは Sterling Decimal Trig Log-Log を使用したと言ってますので、K尺は本来 A尺の上に配置されてますが、 いずれにしても K尺は滑尺から離れているため、滑尺基線で値を探すというのはちょっと苦しいです。 カーソルがもう一つ欲しいところですね。
 
 最後に、本解法についてですが、Gary Flom さんの解法を大いに参考にしました。
 Gary Flom さんの 5乗根の解法では、カーソルを固定して滑尺を移動して a^(3/5) を探してましたが、 これは、元となる 5乗の計算 a^2 * a^3 を A, B尺の基線法(カーソル法)で行っているためです。
 そこで私は、単純に、もしも BI尺があって、中合わせ法(滑尺法)で a^2 * a^3 を計算できるなら、 5乗根の計算は、滑尺を固定してカーソル線で BI尺, K尺の a^(3/5) を探せると思い、ヘンミ 40RK の滑尺を逆さに差し込んで検証してみました。
 
 BI尺を想定した計算尺での a^5 の計算方法は下記の通りです。
 
h>D[a] → K[a^3] ( , A[a^2]) :
 D尺 a にカーソル線を合わせるとK尺に a^3 が得られます。
 (A尺には a^2 が得られてます。)
 
BI[a^3]>h → A[a^5] @sl[i] :
 次に、カーソル線に BI尺 a^3 を合わせると、滑尺基線位置 A尺に a^5 が得られます。
 
 
 
 BI尺の代わりに 滑尺を逆さに差して B尺を逆目盛にし、5乗の計算操作を逆行したものが、本解法による 5乗根の計算操作です。
 以下にダイヤグラムを再掲します。
 
 
 この方法によると、最終的にカーソル線下には、 A尺に a^(2/5) 、 逆B尺と K尺に a^(3/5) 、そして D尺に a^(1/5) が得られます。
 

改版メモ
・2007/09/18 : 1箇所、 a^3 * a^3(誤) を a^2 * a^3 に訂正。
・2007/06/04 : 初版