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対数尺(A,B,C,CI,D,K)で高べき計算


 大半の技術系の両面計算尺には LL尺(L尺も)が配備されてますので、容易に高べき計算が可能です (範囲は限られてますが・・・)。
 片面尺にも大半は L尺が配備されてますので、LL尺より精度は落ち(範囲制限はなし)、操作も面倒ですが、可能です。
 
 で、本題ですが、 『 標準的な片面計算尺(技術系)の A, B, C, CI ,D, K 尺の組合せだけでどの程度まで高べき計算が可能か?』 というのがテーマです。
 
 下表に滑尺操作を 1回までに限定(基線の置換えは別)した場合の a^x や a^(1/x) など( a>0 とします) の計算例を示します。
 途中で数値を読み取って他の尺度に移すのは基本的に NG としましたが、 どうしてもできそうにない計算については、滑尺操作 1回までについて記載しました。
 (ただし、すべてではありません。 例えば、カーソル操作で、D→K を繰り返すと、a^3, a^9, a^27, ・・・ と、 理論的には無限で、キリがありませんので。)
 
 もちろん、下表にあげたものがすべてではありません。 他の方法をいろいろ考えてみるのも楽しいですよ。
 是非、ヘンミ 34RK, 40RK, 70, 74 等を手に持って確認してみてください。
 
 コピペミス・勘違い等あるかもしれませんので、見つけた方はご指摘願います。
 
※ ヘンミ 2664S に代表される 日本でポピュラーな√10ずらし尺系の片面計算尺(K,DF,CF,CIF,CI,C,D,A 等)についても コメントしました。
 B尺が必要な計算はできませんが、C, CI D尺の代わりに CF, CIF, DF尺を使用することができます。
 
※ 計算尺によっては BI尺, DI尺がありますが、ここでは考えません。
 
※ √(a^x) と (√a)^x (a>0) は同じですが、前者のみ表記してます。
 
求める数 操作の例 備考(数値移動による解法等)
 a^(-6)
= 1/ a^6
h>st[i] C[a]>h h>CI[a] → K[1/ a^6]  
 a^(-5)
= 1/ a^5
h>K[a] C[a]>h h>CI[a] → K[1/ a^5]  
 a^(-4.5)
= 1/ a^(4+1/2)
= 1/√(a^9)
h>st[i] B[a]>h h>CI[a] → K[1/√(a^9)] ,
h>A[a] C[a]>h h>CI[a] → K[1/√(a^9)]
ずらし尺系は 2番目の操作で。
 a^(-4)
= 1/ a^4
h>D[a] CI[a]>h (h>st[i]) → B[1/ a^4] ,
h>st[i] C[a]>h h>CI[a] → A[1/ a^4]
ずらし尺系は 2番目の操作で。
 a^(-3.5)
= 1/ a^(3+1/2)
= 1/√(a^7)
h>K[a] B[a]>h h>CI[a] → K[1/√(a^7)] ずらし尺系は不可能?
 a^(-3.33)
= 1/ a^(3+1/3)
= 1/ a^(10/3)
h>D[a] CI[a]>h h>K[a] → B[1/ a^(10/3)] ,
h>K[a] C[a]>h h>CI[a] → A[1/ a^(10/3)]
ずらし尺系は 2番目の操作で。
 a^(-3)
= 1/ a^3
sl[i]>st[i] h>CI[a] → K[1/ a^3]  
 a^(-2.67)
= 1/ a^(2+2/3)
= 1/ a^(8/3)
h>K[a] CI[a]>h (h>st[i]) → B[1/ a^(8/3)] ずらし尺系は不可能?
CI[a]>h で A尺に a^(8/3) が得られ、
h>st[i] でその逆数を B尺に出す。
 a^(-2.33)
= 1/ a^(2+1/3)
= 1/ a^(7/3)
h>K[a] B[a]>h h>CI[a] → A[1/ a^(7/3)] ,
h>A[a] CI[a]>h h>K[a] → B[1/ a^(7/3)]
ずらし尺系は不可能?
 a^(-2)
= 1/ a^2
h>CI[a] → B[a] ,
sl[i]>st[i] h>CI → A[a]
ずらし尺系は 2番目の方法で。
 a^(-1.667)
= 1/ a^(1+2/3)
= 1/ a^(5/3)
h>K[a] CI[a]>h h>A[a] → B[1/ a^(5/3)] ,
h>K[a] C[a]>h h>CI[a] → D[1/ a^(5/3)]
ずらし尺系は 2番目の方法で。
C,CI,D,K尺の組合せで他にもあり。
 a^(-1.5)
= 1/ a^(1+1/2)
= 1/ a^(3/2)
= 1/ √(a^3)
h>A[a] CI[a]>h (h>st[i]) → C[1/a^(3/2)] CI[a]>h で D尺に a^(3/2) が得られ、
h>st[i] でその逆数を C尺に得る。
他の方法もあるが、A C CI→D 等
aを 3回セットするのは冗長。
 a^(-1.333)
= 1/ a^(1+1/3)
= 1/ a^(4/3)
h>K[a] CI[a]>h h>st[i] → C[1/a^(4/3)] ,
h>st[i] C[a]>h h>K[a] → CI[1/a^(4/3)]
他の方法もあるが、K尺は必ず
使用するので、A,B尺が入らない
左記の方法が良い。
 a^(-1.167)
= 1/ a^(1+1/6)
= 1/ a^(7/6)
h>K[a] B[a]>h h>CI[a] → D[1/ a^(7/6)] ,
h>A[a] CI[a]>h h>K[a] → C[1/ a^(7/6)]
ずらし尺系は 2番目の方法で。
 a^(-1)
= 1/a
h>C[a] → CI[1/a] ,
h>CI[a] → C[1/a]
逆数。
 a^(-0.833)
= 1/ a^(5/6)
h>st[i] B[a]>h h>K[a] → CI[1/ a^(5/6)] ,
h>K[a] CI[a]>h h>A[a] → C[1/ a^(5/6)]
ずらし尺系は 2番目の方法で。
 a^(-0.667)
= 1/ a^(2/3)
h>K[a] C[a]>h (h>sl[i]) → D[1/ a^(2/3)] 他にもあるが、K C ID→B 等
aを 3回セットするのは冗長。
 a^(-0.5)
= 1/ a^(1/2)
= 1/√a
h>B[a] → CI[1/√a] ,
sl[i]>st[i] h>A[a] → CI[1/√a]
ずらし尺系は 2番目の方法で。
 a^(-0.333)
= 1/ a^(1/3)
sl[i]>st[i] h>K[a] → CI[a]  
 a^(-0.1667)
= 1/ a^(1/6)
h>K[a] B[a]>h (h>sl[i]) → D[1/ a^(1/6)] ,
h>K[a] sl[i]>h h>A[a] → CI[1/ a^(1/6)]
ずらし尺系は 2番目の方法で。
 a^0
= 1
   
 a^0.1
= a^(1/10)
a^0.2 = a^(1/5) の解法を参照。 a^0.2 = a^(1/5) を計算した後、
h>A[a^(1/5)] → D[a^(1/10)]
 a^0.1111
= a^(1/9)
数値の移動をしないと不可能? 数値の移動を許せば滑尺操作は 0回。
  @h>K[a]→D[a^(1/3)]
  Ah>K[a^(1/3)]→D[a^(1/9)]
 a^0.125
= a^(1/8)
数値の移動をしないと不可能? 数値の移動を許せば滑尺操作は 0回。
  @h>A[a]→D[a^(1/2)]
  Ah>A[a^(1/2)]→D[a^(1/4)]
  Bh>A[a^(1/4)]→D[a^(1/8)]
 a^0.1667
= a^(1/6)
h>K[a] B[a]>h (h>st[i]) → C[a^(1/6)] ,
h>K[a] sl[i]>h h>A[a] → C[a^(1/6)]
ずらし尺系は 2番目の方法で。
D B K→CI は冗長。
 a^0.2
= a^(1/5)
特殊なチューニングをしないと不可能? ※ 問題「5乗根」の答えです。 自力で
  解きたい人は読まないでください。

 逆sl[i]>A[a] h>【find 逆B=K】
            → D[a^(1/5)]
 @滑尺を上下逆に差込み、基線を
  A尺の a に合わせる。
 Aカーソル線で B尺と K尺の数値が
  一致する箇所までチューニングする。
 Bそれが答えではなく、そのときの
  カーソル線下の D尺の値が
  a の 5乗根 a^(1/5) となる。
 【注意】
  A尺への a の設定もそうですが、
  B尺, K尺の一致する数値を探すとき
  に、領域(A1〜A2, B1〜B2, K1〜K3)
  をきちんと合わさないとD尺に正しい
  答えが出ません。
  B尺, K尺の領域の組合せは複雑で
  難しいです。 基線の置換えを含める
  と数値の一致する箇所は 5箇所にも
  なります。
解法の解説
 a^0.25
= a^(1/4)
数値の移動 または チューニングで。 数値の移動(滑尺操作 0回)
  @h>A[a]→D[√a]
  Ah>A[√a]→D[a^(1/4)]
チューニング(滑尺操作 1回)
  h>A[a] sl[r.i]>h h>【find CI=D】
      → D[a^(1/4)] (CI[a^(1/4)])
 a^0.333
= a^(1/3)
h>K[a] → D[a^(1/3)]  
 a^0.4
= a^(2/5)
a^0.2 = a^(1/5) の項参照。 a^0.2 = a^(1/5) の解法で、a^(1/5) と
同時に得られる。
 a^0.5
= a^(1/2)
= √a
h>A[a] → D[√a] ,
h>B[a] → C[√a]
 
 a^0.6
= a^(3/5)
a^0.2 = a^(1/5) の項参照。 a^0.2 = a^(1/5) の解法で、a^(1/5) と
同時に得られる。
 a^0.667
= a^(2/3)
h>K[a] → A[a^(2/3)]  
 a^0.75
= a^(3/4)
数値の移動をしないと不可能? 数値の移動(滑尺操作 0回または 1回)
 @ √(a^3) を求める(a^1.5 の欄参照)
 A h>D[√(a^3)]→A[a^(3/4)]
 a^0.8333
= a^(5/6)
h>K[a] sl[i]>h h>B[a] → D[a^(5/6)] ,
h>A[a] C[a]>h h>K[a] → C[a^(5/6)]
ずらし尺系は 2番目の方法で。
 a^1.167
= a^(1+1/6)
= a^(7/6)
h>K[a] B[a]>h h>D[a] → C[a^(7/6)] ,
h>K[a] C[a]>h h>A[a] → C[a^(7/6)]
ずらし尺系は2番目の方法で。
 a^1.333
= a^(1+1/3)
= a^(4/3)
h>K[a] CI[a]>h (h>sl[i]) → D[a^(4/3)] ,
h>K[a] sl[i]>h h>C[a] → D[a^(4/3)]
K B A→B は aを 3回セットする
手間の上に精度悪い。
 a^1.5
= a^(1+1/2)
= a^(3/2)
= √(a^3)
h>A[a] → K[√(a^3)] ,
h>A[a] CI[a]>h (h>sl[i]) → D[√(a^3)]
スピードをとるか、精度をとるか?
 a^1.667
= a^(1+2/3)
= a^(5/3)
h>K[a] sl[i]>h h>B[a] → A[a^(5/3)] ,
h>K[a] C[a]>h h>D[a] → C[a^(5/3)]
ずらし尺系は 2番目の方法で。
精度重視なら 2番目で。
 a^1.833
= a^(1+5/6)
= a^(11/6)
h>K[a] CI[a]>h h>B[a] → D[a^(11/6)] ずらし尺系は不可能?
数値の移動を許すなら
 @h>D[a] → A[a^2]
 Ah>A[a] C[a^2]>h h>K[a]→C[a^(11/6)]
で、滑尺は 1回だけの操作で可能。
 a^2 h>D[a] → A[a^2] ,
h>C[a] → B[a^2] ,
h>D[a] CI[a]>h (h>sl[i]) → D[a^2]
ずらし尺系は 1,3番目の方法で。
3番目の方法は精度用。
 a^2.17
= a^(2+1/6)
= a^(13/6)
数値の移動をしないと不可能? 数値の移動を許すなら
 @h>D[a] → A[a^2]
 Ah>K[a] C[a^2]>h h>A[a]→C[a^(13/6)]
で、滑尺は 1回だけの操作で可能。
 a^2.33
= a^(2+1/3)
= a^(7/3)
h>K[a] CI[a]>h h>C[a] → D[a^(7/3)] 他にもあるが、K C A→B など A,B尺が
入るのは精度的に不利。
 a^2.5
= a^(2+1/2)
= a^(5/2)
= √(a^5)
h>K[a] sl[i]>h h>B[a] → K[√(a^5)] ,
h>A[a] CI[a]>h h>C[a] → D[√(a^5)]
1番目の方法は aのセットが 2回で済む
が精度は悪い。
ずらし尺系は 2番目の方法で。
 a^2.67
= a^(2+2/3)
= a^(8/3)
h>K[a] CI[a]>h (h>sl[i]) → A[a^(8/3)] 他に、st[i] K C→B , K sl[i] C→A .
 a^2.83
= a^(2+5/6)
= a^(17/6)
数値の移動をしないと不可能? 数値の移動を許すなら
 @h>D[a] → K[a^3]
 Ah>A[a] C[a^3]>h h>K[a]→C[a^(17/6)]
で、滑尺は 1回だけの操作で可能。
 a^3 h>D[a] → K[a] ,
h>D[a] CI[a]>h h>C[a] → D[a^3]
他にも、 D CI C→D , A CI sl[i]→A
など多数あり。
 a^3.17
= a^(3+1/6)
= a^(19/6)
数値の移動をしないと不可能? 数値の移動を許せば滑尺操作1回。
 @h>D[a] → K[a^3]
 Ah>K[a] C[a^3]>h h>A[a]→C[a^(19/6)]
 a^3.67
= a^(3+2/3)
= a^(11/3)
h>K[a] CI[a]>h h>B[a] → A[a^(11/3)] ずらし尺系は不可能?
 a^4 h>D[a] CI[a]>h → A[a^4] 他にもあるが、A CI B→A , K CI sl[i]→K
等、冗長だったり、精度が悪かったり・・・。
 a^4.5
= a^(4+1/2)
= a^(9/2)
= √(a^9)
h>A[a] CI[a]>h h>sl[i] → K[√(a^9)] ,
h>D[a] B[a]>h h>C[a] → K[√(a^9)]
他にもあるが、答えはすべて K尺に。
 a^4.67
= a^(4+2/3)
= a^(14/3)
h>K[a] CI[a]>h h>C[a] → A[a^(14/3)]  
 a^5 h>D[a] CI[a]>h h>B[a] → A[a^5] ,
h>A[a] CI[a]>h h>C[a] → A[a^5]
ずらし尺系は 2番目の方法で。
 a^5.5
=a^(5+1/2)
= a^(11/2)
= √(a^11)
h>K[a] CI[a]>h h>B[a] → K[√(a^11)] ずらし尺系は不可能?
 a^6 h>D[a] CI[a]>h h>sl[i] → K[a^6] ,
h>D[a] CI[a]>h h>C[a] → A[a^6]
 
 a^7 h>K[a] CI[a]>h h>C[a] → K[a^7]  
 a^7.5
= a^(7+1/2)
= a^(15/2)
= √(a^15)
h>D[a] CI[a]>h h>B[a] → K[√(a^15)] ,
h>A[a] CI[a]>h h>C[a] → K[√(a^15)]
ずらし尺系は 2番目の方法で。
 a^8 数値の移動をしないと不可能? 数値の移動を許せばカーソル操作のみ。
 @ D[a]→K[a^2] , A D[a^2]→K[a^4] ,
 B D[a^4]→K[a^8]
 a^9 h>D[a] CI[a]>h h>C[a] → K[a^9]  
 
※ 元ネタは、K+E の昔の取説(No.4053の1938年版の取説)や、「計算尺詳解」、 ISRG のファイル polyphase.xls です。
 
※ 特に ISRG の Excelファイルは、マクロを使って、マンハイムの対数尺のすべての組合せを網羅してます。  (ただし、なぜか間違っている箇所もあるのでご注意願います。)
 
※ また、K+E の取説と ISRGのファイルは、 a^x だけでなく、 a^x * b^y や a^x * b^y * c^z も扱ってます。
 

改版メモ
・2007/09/18 : @ a^(1/8)とa^(1/9)の説明(備考欄)が逆だったのを訂正。 A a^(1/4)のチューニング操作の最初の数値セット h>D[a](誤) を h>A[a](正) に訂正。 B a^(-4.5) , a^(3.67) 追加。
・2007/06/04 : 初版